ファミリービジネスにこそ、ビジネスモデル・イノベーションが必要な理由
「うちは代々このやり方でやってきたから。」 地方の老舗企業でよく耳にする言葉です。 しかし、いまその「やり方」自体が問われています。 市場構造の変化、技術革新、人材の価値観の多様化。 こうした変化の中で、“家業の強み”がそのまま弱みになる時代が来ています。 ファミリービジネスが持続的に発展するためには、 単に新商品をつくることでも、後継者が頑張ることでもなく、 「ビジネスモデルそのものを更新する」視点が欠かせません。
■ 「同じことを続ける勇気」ではなく、「変える責任」を持つ ファミリービジネスは、長年培ってきた信頼・技術・地域との関係を財産としています。 しかし、その財産を守るためには、一度“壊す勇気”が必要になるときがあります。 たとえば、 父の時代に成功した販売チャネルが今は機能していない。 長年の取引先が価格競争で利益を削っている。 若手社員が新しいアイデアを出しても、組織が動かない。 これらはすべて「ビジネスモデルの老化現象」です。 つまり、価値創造・提供・回収の仕組みが、環境の変化に追いついていない。 後継者が直面する最大の壁は、“父の経営”ではなく、“父が残した構造”です。 その構造を見直すことこそ、ビジネスモデル・イノベーションの第一歩です。
■ ビジネスモデル・イノベーションとは何か ビジネスモデルとは、「誰に・何を・どう届け・どう利益を得るか」の全体設計です。 それをイノベーションするとは、価値の生まれ方そのものを再設計することを意味します。 たとえば、 製造業なら:自社製造→OEM提供→共同開発→自社ブランド展開へ。 卸業なら:モノの流通→情報の流通へ。 工務店なら:「家を建てる」→「暮らしを設計する」へ。 こうした転換には、技術力や資金力よりも、 「どんな価値を、誰のために再構築するか」という思考が不可欠です。
■ ファミリービジネスの強み:見えない資産「関係性資本」 ビジネスモデルを変えるうえで、ファミリービジネスには圧倒的な強みがあります。 それが「関係性資本(relational capital)」です。 取引先・地域社会との長期的信頼関係 社員の家族的つながり 代々の顧客からの厚い支持 これらは数字には表れにくい“見えない資産”ですが、 新しい事業モデルを試す際にこそ威力を発揮します。 たとえば、試作品を顧客が無償でテストしてくれたり、 地域の協力で新規プロジェクトが動いたり。 **関係性資本は、新しい挑戦の“心理的安全装置”**なのです。
■ イノベーションを支える「吸収能力」 とはいえ、新しい知識を取り入れても活かせない会社は多い。 その理由は、組織の“吸収能力(absorptive capacity)”が低いからです。 吸収能力とは、 ① 外部からの知を取り込み、 ② 既存の知と結びつけ、 ③ 行動として活かす力。 これが低いと、いくら外部アドバイザーを入れても結果が出ません。 逆に、社員が外部セミナーの内容を自社に応用できるようになると、 ビジネスモデルの再構築は一気に加速します。 吸収能力を高めるには、 「問いを共有する文化」を社内に作ることが重要です。 “なぜ今これをやるのか?”を皆で考えることで、 組織全体が学習する企業体に変わります。
■ 両利きの経営——「守り」と「攻め」の両立 ビジネスモデル・イノベーションには、もう一つの視点が必要です。 それが「両利きの経営(ambidextrous organization)」。 すなわち、 既存事業を“深化(exploitation)”させつつ、 新規事業を“探索(exploration)”する、 この両立をいかに設計するかです。 家業の場合、“深化”を担うのは先代、 “探索”を担うのは後継者という構造が自然にできあがっています。 問題は、この二つが分断していること。 私たちはここに“橋”を架ける支援を行います。 つまり、「理念は同じだが、手段は変える」という共通理解をつくるのです。 この理解が進むと、親子の関係が衝突から協働へと変わり、 新しいビジネスモデルが現実化していきます。
■ 実践の第一歩:顧客構造の再定義 多くの企業が見落としているのが、「顧客の定義」です。 長年の取引先や常連顧客を「当たり前」と思っていませんか? しかし、時代が変われば顧客も変わる。 たとえば、 取引先のバリューチェーンが変わった 若年層の購買動機が「所有」から「体験」へ移行した 地域の人口構造が変化した 顧客が変われば、価値の定義も変わる。 それを見直すことが、すなわちビジネスモデルの更新です。
■ まとめ:家業の未来は、仕組みの更新から始まる ファミリービジネスにおけるビジネスモデル・イノベーションは、 「家業を変える」のではなく、「家業を次に進める」ための行為です。 理念を守りながら、構造を変える。 文化を継承しながら、価値を再構築する。 家族経営を“学習する組織”に進化させる。 その挑戦を支えるのが、私たちの仕事です。 家業の中にある知恵と情熱を再発見し、 次の10年に通用する仕組みへと変える。 それが、戦略組織コンサルティング合同会社のミッションです。
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